2022年度 内田賞受賞理由

推薦根拠論文:

1. 藤岡健人・森本 元・三上 修 (2021) 北海道におけるカラス類の電柱への営巣:撤去にかかるコストの算出と営巣数の多い地域の環境要素の解析.日本鳥学会誌 70: 125–130.


2. 藤岡健人・森本 元・三上かつら・三上 修 (2021) カラス類は都市緑地から遠い電柱に営巣する傾向があるのか.日本鳥学会誌 70: 153–159.


3. 廣部博之・藤岡健人・三上 修 (2021) カラス2種の生息環境,利用空間の高さ,および行動個体数の違い.Bird Research 17: A21–A29.


 藤岡健人氏は、都市部で問題となっているカラス類と人間生活との軋轢解消を目的とした研究を行ってきた(根拠論文1, 2, 3).根拠論文1では電柱へのカラス類の営巣記録から営巣リスクの高い環境要素の抽出と撤去費用の推定を行い、北海道全体で撤去にかかる人件費は年間約4,000万円であるなど、具体的な数値を示した.また、根拠論文2では、都市緑地ではカラスの巣を撤去すると周辺の電柱への営巣リスクが高まる可能性があるため、巣を残すことが望ましい場合があることを示し、撤去方針への具体策を提言した.どちらも都市部におけるカラスと人との軋轢の把握と解決策の提案に貢献するものとして社会的意義も大きく、日本の鳥学が果たすべき社会的責任の一端を担う研究と言える.藤岡氏は中学校の理科教員として働くかたわら、今後も野外調査を続けていく意志を持っており、本賞の受賞は本人への強い励みになると考えられる.また、教員として生徒へ鳥類学を普及していくことにも大いに意欲的であり、今後の鳥類学の発展にも寄与すると考えられる.