2022年度 黒田賞受賞理由

安藤温子氏は,遺伝子解析を駆使することで,島嶼に生息する鳥類の個体群構造や食性を調べ,その移動能力の進化的背景や生態系機能について明らかにしてきた.DNAメタバーコーディング技術の開発と鳥類研究への適用により鳥類学を技術的に牽引すると同時に,地道な野外調査にもとづき島嶼に生息する鳥類の基礎的な生態を数多く明らかにすることで,島嶼生態系の成立過程における鳥類の貢献について明らかにしてきた.遺伝学的な技術と島嶼生物学の視点を組み合わせたこれらの研究は,単に分析技術に依拠した研究にとどまらず,島嶼の鳥類の適応進化を主題とした島国日本の特長を活かした独自性の高い研究である.鳥学に関連する研究成果は合計22編の査読付き論文として国内外の学術誌に掲載されている.国内一般向けに研究成果を数多く解説しているほか,国際学会において3回の招待講演を含む合計19回の発表を行い,また国際共同研究も積極的に推進している.これまで学会事務局や英文誌編集委員,大会実行委員を務めるなど日本鳥学会にも様々な形で貢献してきた.