2021年度 中村賞受賞理由

推薦根拠論文: Natsukawa, H. 2020. Raptor breeding sites as a surrogate for conserving high avian taxonomic richness and functional diversity in urban ecosystems. Ecological Indicators, 119, 106874.
 夏川遼生氏の論文は,都市域におけるオオタカの指標性を種の多様性と機能的多様性の側面から評価している.本研究では,鳥類の中でもしばしばアンブレラ種とみなされるオオタカを対象として,それが実際に「アンブレラ種」であり,オオタカが存在している環境はそうでないところよりも豊かな生態系であることを示している.近年生物多様性保全上の重要性が高まっている都市生態系に注目し,そうした都市にも生息する上位捕食者として注目度の高いオオタカを対象にして,一般論とされてきた事象を丁寧に実証しているという点でオリジナリティが高い研究である.また,得られた成果は,生態系モニタリングや環境影響評価の点で重要なもので,鳥類学的に価値が高い.本研究における調査と解析は丁寧かつ綿密に計画・実施されていて,単著論文として発表されたことからも研究者としての能力の高さがうかがえ,将来性も高く評価された.