2021年度 黒田賞受賞理由

片山直樹氏は,農地景観における鳥類を研究対象とし,主に農業の集約化や耕作放棄などが農地の生物多様性に与える危機の深刻さを明らかにしてきた.さらにその解決策とされる農地利用や農法の効果を文献レビューやメタ解析を駆使しながら長期・広域的な傾向をも含めて精緻に評価してきた.片山氏は農地生態系のなかでの鳥類の役割の解明や農地生態系の保全課題の解決に向けた研究テーマに一貫して取り組むことで,鳥類学,生態学,保全科学に関する多数の研究業績を着実に積み上げてきた.研究成果は多くの国際誌に掲載されている.鳥類研究を通じて社会的課題の理解や解決に貢献しようとする片山氏の研究姿勢は,鳥学会が果たすべき社会的責任の一つを明確に示していると言える.これまで複数の委員や事務局を務めるなど日本鳥学会にも様々な形で貢献してきた.片山氏のこれらの業績が高く評価された.