2020年度 黒田賞受賞理由

山本誉士氏は,主にバイオロギング手法を用いて,これまで観察困難なために未解明であった海鳥の繁殖地外での行動や環境利用,渡り経路を明らかにしてきた.このような情報は将来の海鳥研究の基礎を成す高い価値を持っている.また多くのフィールド調査で得た膨大なバイオロギングデータに精緻な統計数理解析を加えることで,鳥類学のみならず行動学,海洋学,環境学等の分野横断的な研究業績を数多く積み上げてきた.こうしたデータ駆動型の研究スタイルは,鳥類学の新展開として今後益々の発展が期待できる.研究成果はOrnithological Scienceをはじめ多くの国際誌に掲載されている.日本鳥学会でも和文誌・英文誌の編集委員など様々な形で貢献してきたほか,一般に向けた研究成果の解説も数多く行ってきた.世界各地で精力的に国際共同研究を進めると共に,社会に向けた積極的な情報発信も行っており,今後も日本の鳥類学の発展に大きく寄与することが期待される.