2019年度 中村賞受賞理由

推薦根拠論文: Nao Ota, Manfred Gahr, and Masayo Soma (2018) Couples showing off: Audience promotes both male and female multimodal courtship display in a songbird. Science advances 4.10: eaat4779.
 求愛ディスプレイはつがい相手の獲得に重要な役割を果たす行動であり,多くの研究がなされてきた.しかしながら,さえずりに比べ求愛ダンスについては,その機能,意義は未解明な点が多い.太田菜央氏は,雌雄がともに求愛さえずりと求愛ダンスを行なうルリガシラセイキチョウを用い,雌雄がつがいでいる時よりも第三者に見られている時,特に異性の第三者に見られている時により頻繁にダンスを行なうことを発見した.求愛ディスプレイについて,つがい相手以外の他者の影響に注目した点,さえずりとダンスを同時に行なう複合的行動とさえずりだけの行動を分けて分析した点,同性と異性を分けて扱った点など,ユニークな着眼点からの丁寧な実験設定,分析による研究である.ダンスの進化的意義がつがい外交尾と関連付けて考察されていることも興味深い.今後,多くの行動学的研究に影響を与えることが予想される,インパクトのあるオリジナリティの高い研究ということができ,今後が期待される.