2019年度 黒田賞受賞理由

吉川徹朗氏は,生態学的な観点から鳥類と植物の生物間相互作用に着目し,多面的なアプローチを用いて秀でた研究成果をあげている.とりわけ,鳥類の種子散布や花粉媒介といったテーマで,優れた研究を着実に積み重ねてきた.鳥類と植物の関わりは,生態学において古典的なテーマであるが,吉川氏は,従来の理解が十分でないことを指摘し,より包括的な,あるいは進取に富んだ知見を呈する研究に取り組んできた.一連の研究は,鳥類の生態学的位置付けの理解に関し重要な貢献をなしているだけでなく,保全への貴重な示唆をも含んでいる.また,市民データの活用やモデリングなど,多岐にわたる手法をもちいた研究展開は,研究者としての高い資質を示している.さらに,自身の研究内容を体系的に分かりやすく記述した優れた内容の書籍を単著で刊行したことは高く評価される.