2018年度 黒田賞受賞理由

鈴木俊貴氏は,シジュウカラ科鳥類を主たる対象として,野鳥の音声コミュニケーションの研究を行ってきた.その知見は,シジュウカラ科鳥類が警戒声や集合声によって捕食者のタイプを伝えたり,仲間を集めたりするという機能を明らかにしただけではなく,異なる音声を発する順が意味を持つことや,音声によって伝えられた捕食者のタイプによって受信者が適切な行動をとることをも示す非常に新規性の高いものである.一連の研究は,ヒトの言語によるコミュニケーションに固有と考えられてきた要素が鳥類でも進化してきた可能性を探るという独創的な視点から,詳細かつユニークな行動実験を用いて仮説を検証するという説得力のあるものであり,オリジナリティが高く,また論文業績としてもいずれも卓越したものである.このような成果は,鳥類のみならず動物のコミュニケーションや社会行動の理解を進める重要なものである.今後もユニークな視点と精力的な活動によって鳥類学の発展に大きく寄与することが期待される.